■免震の市庁舎

熊本県 某市

熊本県内某市庁舎

【前震】震度4 【本震】震度5強

構造・階数 免震・鉄骨造、一部鉄骨鉄筋コンクリート造 地下1階・地上5階
お話いただいた方 県内市庁舎 施設管理者様
取 材 日 2016年7月20日

災害時、防災拠点になる市の施設。さらに免震の普及を。

■物件の概要と免震装置導入の理由

県内某市の新庁舎は、旧庁舎の老朽化に伴い、新しく建設されたものです。行政棟(免震)のほか、音楽ホール、図書館、会議室などが設置された市民交流センター(耐震)を併設しています。

私は計画段階の状況を知りませんが、当初、庁舎は免震構造ではなく、耐震構造で建てる計画だったようです。ところが基本設計の時に東日本大震災が発生し、市民や有識者の間から「熊本にも大地震が起きるかもしれない」「庁舎を免震化したほうがいい」という声が挙がったことや、当時完成したばかりの市立病院が、免震構造を先駆けて採用していたことが、耐震化を見直すきっかけになったと聞いています。

■熊本地震発生時の建物等の状況

4月14日の前震が起きた時は庁舎で残務整理をしていました。3階にいまして、いきなり南北方向に大きな揺れを感じました。ブラインドがカタカタと鳴っていました。免震建物は揺れないものだと思っていたので、これは相当大きな地震が来たと思いました。私はフロアの端のほうにいて揺れを感じたのですが、中央付近に立っていた同僚は落ち着いているように見えました。場所によって揺れ方が違うのかもしれません。

国土交通省関係の調査で、当時建物にいた職員に取ったアンケート結果を見ると、揺れて怖かったという意見が多くありました。免震建物は揺れるという認識がなかったのだと思います。

本震の時は、自宅で就寝中だったため、庁舎の揺れは分かりませんが、本震後に免震層内に設置されたケガキ計を見ると、最大16㎝建物が動いた軌跡が確認できました。建物については、男子トイレの壁と石膏ボードの継ぎ目にクラックが入ったほか、エキスパンションの継ぎ目が破損したものの、いずれも被害は軽微なもので建物自体に大きな損傷はありませんでした。なお、同じ新築でも他の庁舎(耐震構造)は、震度の違いもあるかもしれませんが、壁にクラックが入ったと聞きました。

※エキスパンション(ジョイント):免震建築物と非免震建築物を緊結せずに接続する工法もしくは部材。

■免震に対する想いや今後の取り組み

市庁舎は防災の拠点になるので、行政機能をストップさせるわけにはいきません。耐震建物で大きな損壊はまぬがれても、建物内で備品や書類が散乱しては業務が滞ります。通常の業務がそのまま続けられるという点では免震建物のほうがいいですね。また、免震技術で安全性が向上した庁舎は一次的な避難場所になります。当庁舎が免震の建物であることをもっと市民にアピールすべきかと思います。

耐震構造と免震構造は建設費用に大きな金額差があるとは一概には言えないと思います。免震構造は柱の本数を減らし、その分コストを抑えることができる場合もあるためです。市庁舎の場合、建設コストは若干割高にはなりましたが、耐震構造は被害を受ければ補修が必要になりますから、補修費をふまえて、長い目で見れば差はなくなるのではないかと思います。また、免震建物にしたおかげで柱の本数が減り、空間を広く使えるメリットもありました。個人的には免震構造の庁舎がもっと普及するといいと思いますし、熊本地震を経験して、今後、県内に免震構造の庁舎が増えていくものと考えます。